2010年2月27日土曜日

市街地建築物法施行規則 7

第三章 建築物ノ構造設備
第一節 一般構造設備

第七條 (敷地の衛生)
建築物ノ敷地ハ其ノ接スル道路境界ニ於ケル路面ヨリ高カラシムヘシ但シ建築物ノ用途又ハ土地ノ状況ニ依リ地方長官本條ノ規定二依り難シト認メ又ハ必要シナト認メタル場合ハ此ノ限リ在ラス

建築物の敷地はその接する道路境界における路面より高くすること。ただし建築物の用途又は土地の状況により地方長官が支障なしと認め、又は必要なしと認めた場合はこの限りでない。(現法第19条1項に同じ)

第八條 (敷地が湿潤な場合の命令)
建築物ノ敷地濕潤ナルトキ又ハ出水汎濫ノ虞アルモノナルトキハ地方長官其ノ地盤面ノ地揚高又ハ建築物ノ床高二關シ必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得

建築物の敷地が湿潤なとき又は出水氾濫のおそれがあるときは、地方長官はその地盤面の地上げ高又は建築物の床高に関し、必要な命令を発し又は処分をすることができる。(現法第19条2項類似)

第九條 (敷地の排水)
建築物ノ敷地ニハ其ノ敷地内ニ於ケル雨水及汚水ヲ排泄又ハ處理スヘキ適當ナル設備ヲ爲スヘシ

建築物の敷地にはその敷地内における雨水及び汚水を排泄又は処理すべき適当な設備を設けること。(現法第19条3項類似)

第十條 (下水管等の材料)
下水溝、下水管、溜桝ノ類ハ耐水材料又ハ地方長官ノ承認スル材料ヲ以テ構造スヘシ

下水溝、下水管、溜桝の類は耐水材料又は、地方長官の承認する材料にて構造とすること。


第三章突入!!
第一節 一般構造設備のうち、第7条から第10条までアップします。

2010年2月26日金曜日

市街地建築物法施行規則 6

第二章  建築物ノ突出部

第四條 (建築線を突出する場合の特例) 
市街地建築物法第九條但書ノ建築物ノ前面突出部ハ左ノ範圍内ニ於テ建築線ヨリ突出セシムルトヲ得但シ特ニ地方長官ノ許可ヲ受ケタル場合ノ外前面建築線間ノ距離ノ二十分ノ一ヲ超過スルコトヲ得ス

市街地建築物法第9条但し書きの建築物の前面突出部は以下の範囲内において建築線より突出してもかまわない。ただし、地方長官の許可を特別に受けた場合の外前面建築線間の距離の1/20を超過してはならない。
建築線(敷地境界線)から建物までの距離の1/20を超えてはならないという意味です。市街地建築物法第9条とは、「建築物は建築線より突出して建築することは出来ない。但し建築物が地盤面下にある場合はこの限りでない。」

一 蛇腹、軒、小塔、出窓、標旗、標燈、招牌其ノ他之二類スルモノハ路面上十尺以上ニ在ル場合ニ限リ三尺迄

蛇腹、軒、小塔、出窓、標旗、標燈、招牌その他これらに類するものは路面より10尺(3m)以上にある場合に限り3尺(90cm)まで突出を認める。

二 出入口ノ階段、凹庭ノ手摺地覆、腰石、根石其ノ他之ニ類スルモノハ一尺迄

出入り口の階段、凹庭の手摺地覆、腰石、根石その他これらに類するものは1尺(30cm)まで突出を認める。
現在の建築基準法では道路側の境界線を越えることは認められていません。(道路後退線内も)が、市街地建築物法ではある程度までは認められていたようです。(原則禁止ですが)ただ、階段や腰石など、せいぜい10~20cm程度の用途に限定されていたようです。

第五條 (建築線の越境範囲) 
市街地建築物法第九條但書ノ建築物ノ基礎ハ地方長官特ニ指定スル場合ヲ除クノ外道路幅ノ境界線ヲ超エサル範圍内ニ於テ建築線ヨリ突出セシムルコトヲ得

市街地建築物法第9条但し書きの建築物の基礎は地方長官が特に指定する場合を除き、道路幅の境界線を越えない範囲内において建築線より突出することを認める。
建築線は必ずしも道路位置と同じではなく、水路や泥上げスペースなど公的なものがある場合の特例だと解釈できる。これにより第4條は道路へ越境は不可だが、道路以外の公共用地なら程度によるが可ということがわかる。

第六條 (建築物の高さ)
装飾塔、物見塔、屋窓、昇降機塔、水槽等建築物ノ屋上突出部ニ付テハ市街地建築物法施行令第四條乃至第八條ノ高ノ最高限ノ五分ノ一迄ハ建築物ノ高ニ之ヲ算入セス但シ其ノ算入セサル部分ノ最大幅ハ建築物ノ高ノ五分ノ一ヲ、其ノ最大面積ノ合計ハ建築面積ノ十分ノ一ヲ超過スルコトヲ得ス

装飾塔、物見塔、屋窓(トップライト)、昇降機塔、水槽等建築物の屋上突出部については市街地建築物法施行令第4条から第8条の高さの最高限度の1/5までは建築物の高さにこれを算入されない。ただし、その算入されない部分の最大幅は建築物の高さの1/5を、その最大面積の合計は建築面積の1/10を超えてはならない。
現在の建築基準法では令2条6号ロにより規定されているが、建築面積の1/8以内、高さ12m以内(地域により異なるが)である。

第二章突入
建築物の突出部に関する規定です。
今回は第4条から第6条までです。

2010年2月25日木曜日

市街地建築物法施行規則 5

市街地建築物法施行規則の第5回目です。

十九 建築物ノ大修繕トハ壁體、柱、小屋若ハ基礎ノ過半ノ修繕又ハ之二準スル構造上主要ナル部分ノ修繕ヲ謂フ

建築物の大修繕とは壁体、柱、小屋もしくは基礎の過半の修繕又はこれに準ずる構造上主要な部分の修繕をいう。
現在の法2条14号の規定による大規模の修繕と似ているが違う取り扱いである。
現法では法2条5号による主要構造部の過半の修繕が該当するが、この中に「基礎」は含まれていない。基礎は「構造上主要な部分」で定義があるが、一般に防火規定を意味する「主要構造部」ではない。当時の規定は構造と防火の意味分けが不明瞭であったようです。


二十 大變更トハ壁體、柱、床、小屋、基礎等構造上主要ナル部分ノ變更ヲ謂フ

大変更とは、壁体、柱、小屋もしくは基礎等構造上主要な部分の変更をいう。
この大変更というのは、現在の基準法には無いものである。これは構造上主要な部分とあるので明らかに構造の安全上の配慮である。
又、過半などと書いていないので、例え少しでも変更するなら該当するようです。



第二條 (測量における取り扱い)
本則ノ適用ニ關シ土地又ハ建築物ニ關スル測算方法、呼稱等ニ付疑義ヲ生シタルトキハ地方長官之ヲ決定ス

本則の適用に関し土地又は建築物に関する測算方法、呼び称等について疑義が生じたときは地方長官はこれを決定する。


第三條 (建物の維持)
本則ニ規定セル建築物ノ採光、換氣、防火、避難、淸潔、強度ニ關スル構造設備ハ常ニ有数ニ保持スヘシ

本則に規定する建築物の採光、換気、防火、避難、清潔、強度に関する構造設備は常に維持管理すること。清潔って規定があったんですね。

第一章 通則に関する事項は、ここで終わり。
第3条までアップです。

2010年2月24日水曜日

市街地建築物法施行規則 4

市街地建築物法施行規則の第4回目です。

十七 甲種防火戸トハ左ノ各號ノ一ニ該當スルモノヲ謂フ
イ 鐵製ニシテ鐵板ノ厚五厘以上ノモノ
ロ 鐵骨「コンクリート」造又ハ鐵筋「コンクリート」造ニシテ厚一寸二分以上ノモノ
ハ 厚五寸以上ノ土藏扉地方長官ハ防火戸ノ構造ノ種類ニ依リ適當ト認ムルモノニ對シ前各號ノ規定二拘ラス別段ノ定ヲ爲スコトヲ得

甲種防火戸とは次の各号の1に該当するものをいう。
イ 鉄製にして鉄板の厚さ5厘(1.5mm)以上のもの
ロ 鉄骨コンクリート造又は鉄筋コンクリート造にして厚さ1寸2分(36mm)以上のもの
ハ 厚5寸(15cm)以上の土蔵扉2項 地方長官は防火戸の構造の種類により適当と認めるものに対し前各号の規定にかかわらず別途規定を設けることが出来る

現在の建築基準法ではH12告示第1369号により「特定防火設備」として具体的に定められているが、ロの36mmは35mmである。平成12年改正前は令110条にて甲種防火戸として定められているものがそのまま告示になっており、基本的には市街地建築物法より変わっていない。(現在でも甲種防火戸の呼び名で技術者間の会話では通用している)ちなみに現在の告示では若干細かく且つ換気用の開口規定などの緩和規定もある。

十八 乙種防火戸トハ左ノ各號ノ一ニ該當スルモノヲ謂フ
イ 鐵製ニシテ鐵板ノ厚五厘未滿ノモノ
ロ 鐵骨「コンクリート」造又ハ鐵筋「コンクリート」造ニシテ厚一寸二分未滿ノモノ
ハ 木造又ハ鐵造ニシテ屋外ニ面スル部分ヲ厚一寸以上ノ「モルタル」、漆喰又ハ適當ナル厚ノ石綿盤ノ類ヲ以テ被覆シタルモノ

乙種防火戸とは、次の各号の1に該当するものをいう。
イ 鉄製にして鉄板の厚さ5厘(1.5mm)未満のもの
ロ 鉄骨コンクリート造又は鉄筋コンクリート造にして厚さ1寸2分(36mm)未満のもの
ハ 木造又は鉄造にして屋外に面する部分を厚1寸(30mm)以上のモルタル、しっくい又は適当な厚さの石綿板の類をもって被覆したもの

現在の呼び名は防火設備だが、これも乙種防火戸として通用する。ちなみに現在の告示(H12告示第1360号)では鉄板厚0.8mm以上1.5mm未満、又、網入りガラスで造られたものなどがある。「ハ」の規定もそのまま通用するのだが、現在では石綿板は使用できない。その代わり0.9mm以上の石膏ボードが使用可。

3 
地方長官ハ防火戸ノ構造ノ種類二依リ適當ト認ムルモノニ對シ前各號ノ規定二拘ラス別段ノ定ヲ爲スコトヲ得

3項 
地方長官は防火戸の構造の種類により適当と認めるものに対し前各号の規定にかかわらず別途規定を設けることが出来る

市街地建築物法施行規則第1条のうち、17号と18号を記載します。
防火設備なので区切りがいいのでここまでとします。

2010年2月23日火曜日

市街地建築物法施行規則 3

施行規則の3回目です。

十四 床又ハ屋根ノ耐火構造トハ左ノ各號ノ一ニ該當スルモノヲ謂フ
イ 鐵筋「コンクリート」造
ロ 鐵骨ヲ有スル鐵筋「コンクリート」造、煉瓦造又ハ石造
ハ 煉瓦造又ハ石造
ニ 最下階ノ床二在リテハ土間、叩、石敷ノ類


床又は屋根の耐火構造とは次の各号の1に該当するものをいう。
イ 鉄筋コンクリート造
ロ 鉄骨を有する鉄筋コンクリート造、レンガ造、石造
ハ レンガ造又は石造
ニ 最下階の床においては土間、たたき、石敷きの類

これらによるが、中間階の床はイ、ロ又はハの規定が該当することに読み取れる。最下階については、現在の建築基準法第2条5号「主要構造部」で除かれている。


十五 柱ノ耐火構造トハ左ノ各號ノ一ニ該當スルモノヲ謂フ
イ 煉瓦造又ハ「コンクリート」造
ロ 鐵筋「コンクリート」造
ハ 鐵柱ニシテ耐火的ニ有効ナル被覆ヲ爲シタルモノ

ニ 石造ニシテ地方長官ノ承認セルモノ


柱の耐火構造とは次の各号の1に該当するものをいう。
イ レンガ造又はコンクリート造
ロ 鉄筋コンクリート造
ハ 鉄柱にして耐火的に有効な被覆をしたもの
ニ 石造にして地方長官の承認したもの
国家などの評価でなく、地方長官が承認した「石」造ならOKとなっています。被覆の厚さや規定はあるのでしょうか??


十六 階段ノ耐火構造トハ左ノ各號ノ一ニ該當スルモノヲ謂フ
イ 鐵筋「コンクリート」造、煉瓦造又ハ石造
ロ 鐵骨ヲ有スル鐵筋「コンクリート」造、煉瓦造又ハ石造
ハ 鐵造


階段の耐火構造とは次の各号の1に該当するものをいう。
イ 鉄筋コンクリート造、レンガ造又はコンクリート造
ロ 鉄骨を有する鉄筋コンクリート造、レンガ造、石造
ハ 鉄造

ここで、「ハ」鉄造が認められていることはちょっとビックリです。現在では令107条にて30分耐火が必要で、(108条の3にて準耐火ではOKですが)一般的に鉄に被覆又は不燃であるコンクリートと足せばOKです。

今回は第1条14号から16号までです。

2010年2月22日月曜日

市街地建築物法施行規則 2

施行規則の2回目です。

九、界壁トハ接續建築物ヲ區劃スル壁體ヲ謂フ

界壁とは、接続建築物を区割りする壁体をいう。
この規定は長屋などが当時から多いので防火規定が設けられていました。一体の建物で区割りする必要があるのでこのような書き方がされていました。

十 不燃材料トハ、煉瓦、石、人造石、「コンクリート」、石綿盤、瓦、金屬、陶磁器、硝子、「モルタル」、漆喰ノ類ヲ謂フ

不燃材料とは、レンガ、石、人造石、コンクリート、石綿板、瓦、金属、陶磁器、ガラス、モルタル、漆喰の類をいう。
現在はH12告示第1400号で定められているが、繊維混入セメント板、ケイカル板、石膏ボード、ロックウール、グラスウールなどが入っている。石綿板はアスベスト問題で消されている。(他に認定品も認めている)

十一 耐水材料トハ煉瓦、石、人造石、「コンクリート」、鉛、「アスファルト」、陶磁器ノ類ヲ謂フ

耐水材料とはレンガ、石、人造石、コンクリート、鉛、アスファルト、陶磁器の類をいう。
現在は施行令第1条4号で記載されているが、鉛が無く、ガラスが含まれている。鉛板は当時、施工の容易さ、耐久性などにより屋根材などで用いられていたが、鉛中毒などが報道されてから削除されている。

十二 石造トハ石造、人造石造及「コンクリート」造ヲ謂フ

石造とは石造、人造石造及びコンクリート造をいう。
ここでは無筋コンクリートと扱います。

十三 壁體ノ耐火構造トハ左ノ各號ノ一ニ該當スルモノヲ謂フ
イ 厚一尺以上ノ煉瓦造又ハ石造
ロ 厚四寸以上ノ鐵筋「コンクリート」造鐵骨造ノ場合ト雖壁體ノ厚ハ本號イ又ハロノ規定二依ル

壁体の耐火構造とは次の各号の1に該当するものをいう。
イ 厚1尺(30cm)以上のレンガ造又は石造
ロ 厚4寸(12cm)以上の鉄筋コンクリート造。鉄骨造の場合といえども壁体の厚さは本号イ又はロの規定による。

これにより、鉄骨造であっても30cm以上のレンガ、コンクリート又は別建てでRC造の12cm以上の壁がなければ耐火構造にならないことになる。

今回は第1条の第9号から第13号まで記載します。

2010年2月19日金曜日

市街地建築物法施行規則 1

今回から施行規則を掲載していきます。
具体的な規定が多いので参考になりますよ。

市街地建築物法施行規則 私家版1
※注 この中で「地方長官」とは各道府県の細則により規定されているものをいう。

第一章 通則

第一條(用語の定義)本則ニ於ケル用語ハ左ノ例ニ依ル一 居室トハ居住ノ用ニ供スル室ヲ謂フ  玄關、廊下、階段室、外套室、便所、手洗所、浴室、物置、納戸、暗室ノ類ハ居室ト看做サス

居室とは居住の用に供する室をいう。玄関、廊下、階段室、コート室、便所、手洗所、浴室、物置、納戸、暗室の類は居室とみなさない。外套室とは防寒具などの外着を置いておくようなクロークのことです。

二 地階トハ其ノ床面地盤面下ニ在ル階ヲ謂フ但シ其ノ床面地盤面ヲ下ルコト一尺未滿ノモノハ之ヲ第一階ト看做ス

地階とはその床面地盤面下にある階をいう。ただし、その床面地盤面を下がること1尺(30cm)未満のものは地上階、第1階とみなす。この基準は現在の建築基準法より緩いというか異なります。現在の定義では施行令第1条2号により床面から地盤面までの高さがその階の天井高さの1/3以上のものとなっている。物置など非居室ならいざ知らず、居室的用途なら70cm以上ですので。

三 屋階トハ屋根裏ニ設ケタル階ヲ謂フ

屋階とは、屋根裏に設けた階をいう。小屋裏を階とする扱いです。でも考え方は一般階と同じです。

四 床高トハ床面ヨリ其ノ直下地面迄ノ距離ヲ謂フ

床高とは床面よりその直下地面までの距離をいう。この時代は平均GLといった考えはありません。

五 階高トハ其ノ階ノ床面ヨリ其ノ直上階ノ床面迄ノ高ヲ謂フ但シ最上階ニ在リテハ其ノ天井高ヲ謂フ

階高とはその階の床面よりその直上階の床面までの高さをいう。ただし最上階においてはその天井高をいう。現在の確認申請でも5面の最上階の高さ記述は不要です。これは天井高と同じために不要という扱いになっています。

六 天井高トハ室ノ床面ヨリ天井迄ノ高ヲ謂フ2項 一室ニシテ天井高異ル部分アルトキハ其ノ室ノ床面積ヲ以テ容積ヲ除シタルモノヲ謂フ

天井高とは室の床面より天井までの高さをいう。1室にて天井高の異なる部分があるときは、その室の床面積をもって容積を割ったものをいう。現在の平均天井高の求め方と同じです。

七 外壁トハ建築物ノ外側ヲ構成スル壁體ヲ謂フ

外壁とは建築物の外側を構成する壁体をいう。

八 間壁トハ建築物ノ内部ヲ區劃スル壁體ヲ謂フ

間壁とは建築物の内部を区割りする壁体をいう。


今回は第1条のうち第8号までです。
用語の定義は結構な分量になるので3~4回に分けてアップしていきます。ちなみに20号まであります。

2010年2月18日木曜日

市街地建築物法 特例法

そのほか、時代を感じさせる特例法を紹介します。

市街地建築物法及同法施行令戰時特例

第一條 
戰時行政特例法ノ規定ニ基ク市街地建築物法ノ特例及大東亞戰争中二於ケル市街地建築物法施行令ノ特例ハ本令ノ定ムル所ニ依ル

第二條 
市街地建築物法第二條第一項、第三條及第四條第一項ノ規定ハ之ヲ適用セズ

第三條 
市街地建築物法施行令第一條乃至第十條、第十二條、第十三條、第二十五條及第二十六條ノ二ノ規定ハ之ヲ適用セズ

昭和十八年十二月二十四日


市街地建築物法及び同法施行令戦時特例

第一条
戦時行政特例法の規定に基づく市街地建築物法の特例及び大東亜戦争中における市街地建築物法施行令の特例は、本令の定める所による。

第二条
市街地建築物法第2条第1項、第3条及び第4条第1項の規定は適用しない。第2条から第4条は用途地域に関する記述です。

第三条
市街地建築物法施行令第1条から第10条、第12条、第13条、第25条から第26条の2の規定は適用しない。

第1条から第10条は用途地域の規定、高さ制限の規定、道路幅員、接道の規定です。第12条、第13条は、煙突などの突出したものの高さ規定など。第25条から第26条の2は建築許可の取り扱いに関することです。
これらから、本土決戦に向けて緊急的に国が施設などを超法規的に建てるための処置であったことがわかります。住居地域であっても軍需工場や施設を造る必要性があるかもしれないので、特例を設けたんでしょう。

2010年2月17日水曜日

市街地建築物法施行令 11

市街地建築物法施行令私家版 その11

第29條(仮設建築物)
1 博覧会建築物、観覧場、飾塔、足代、桟橋其ノ他ノ假設建築物ニシテ行政官庁支障ナシト認ムルモノニ対シテハ市街地建築物法第2條乃至第6條、第9條及第11條ノ規定ヲ適用セザルコトヲ得

博覧会建築物、観覧場、飾塔、足場桟橋その他の仮設建築物で行政が支障ないと認めるものに対しては市街地建築物法第2条から第6条、第9条および第11条の規定を適用しない。

節29條ノ2(計画道路境域内の仮設建築物)
1 市街地建築物法第26條第2項ノ規定ニ依り道路ト看做サレタル計画ノ道路ノ境域内ニ於テ行政官庁支障ナシト認ムルトキハ同法第8條、第9條及第11條ノ規定ニ拘ラズ存続期限ヲ附シ假設建築物ノ建築ヲ許可スルコトヲ得

市街地建築物法26条第2項の規定により道路とみなす計画道路に範囲内において行政庁が支障ないものと認めるときは法第8条、第9条および第11条の規定に限らず存続期間を付けた上で仮設建築物の建築を許可することができる。

第30條(市街地建築物法の道路)
1 幅員4メートル未滿2.7メートル以上ノ道路ニシテ左ノ各号ノ一ニ該当スルモノハ之ヲ市街地建築物法ノ道路卜看做ス

幅員4m未満2.7m以上の道路で下記の各号に該当するものは市街地建築物法の道路とみなす。

一 行政官庁市街地ノ状況ニ依り特ニ指定シタルモノ

行政庁が市街地の状況により特に指定したもの

ニ 土地区画整理設計又ハ行政官庁ノ指定シタル建築線ニ基キ築造セラレタルモノ

土地区画整理設計又は行政庁の指定した建築線に基づき築造されたもの

2 幅員4メートル以上ノ道路ノ新設又ハ変更ノ計画アル場合ニ於テ行政官庁其ノ計画ヲ告示シタルトキハ其ノ計画ノ道路ハ之ヲ市街地建築物法ノ道路卜看做ス

幅員4m以上の道路の新設又は変更の計画がある場合において行政庁がその計画を告示したときはその計画の道路は市街地建築物法の道路とみなす。
第30条は昭和になってからの改正により4mとなるのだが、当初は9尺(2.7m)道路だったので移行するために新たに追加された条文である。防災活動の観点からこのようになるのだが、2項にあるように国としては4m道路を推奨しているようです。


附則 本令ハ市街地建築物法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス(大正9年12月1日ヨリ施行)
附則 本令ハ公布ノヨリ之ヲ施行ス(大正12年8月30日 勅令第395号)
附則 本令ハ大正13年7月1日ヨリ之ヲ施行ス(大正13年6月10日勅令第152号)
附則 本令ハ國宝保存法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス(國賓保存法ハ昭和4年7月1日ヨリ施行ス)(昭和4年6月29日勅令第213号)
附則 本令ハ昭和7年2月1日ヨリ施行ス(昭和6年12月26日勅令第294号)
附則 本令ハ昭和9年法律第46号施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス(昭和10年2月1日ヨリ施行)  大正9年勅令第540号ハ之ヲ廃止ス(昭和9年12月24日勅令第340号)
附則 本令ハ昭和13年法律第29号施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス(昭和14年2月1日ヨリ施行)(昭和14年1月9日勅令第11号)

市街地建築物法施行令は、これで終了です。

2010年2月16日火曜日

市街地建築物法施行令 10

市街地建築物法施行令 その10

第25條(建築工事中及び有設計建築物に対する準用)
1 市街地建築物法第18條ノ規定ハ建築工事中ノ建築物及建築工事ニ着工セザルモ設計アル建築物ニ之ヲ準用ス

市街地建築物法第18条の規定は、建築工事中の建築物及び建築工事に着工していないが設計がある建築物に適用する

第26條(建築工事中及び有設計建築物の許可)
1 行政官庁ハ建築工事中ノ建築物又ハ建築工事ニ着工セザルモ設計アル建築物ニシテ其ノ建築竣成ノ後ニ於テ市街地建築物法第18條第1項ノ規定ニ依ル措置ヲ命ズル必要ナシト認ムルモノニ付テハ其ノ建築ヲ許可スルコトヲ得

建築工事着工中又は建築工事に着工していないが設計がある建築物で建築竣工後に市街地建築法18条第1項に規定による措置(用途が変更する又は指定内容が変更する)を命じる必要なしと認めるものは建築の許可をすることとする。

第26條ノ2(擁壁)
1 建築物ノ敷地ヲ造成スル爲ニスル擁壁ニ対シテハ市街地建築物法第9條、第12條、第15條及至第22條及第25條ノ規定ヲ準用ス

建築物の敷地を造成するためにするよう壁に対しては市街地建築物法第9条、第12条、第15条から第22条まで、および第25条の規定を準用する。

第27條(法を適用しない建築物)
1 市街地建築物法ハ國宝保存法又ハ史跡名勝天然紀念物保存法ノ適用ヲ受クル建築物ニ付之ヲ適用セズ

市街地建築物法は国宝保存法又は史跡名勝天然記念物保存法の適用を受ける建築物については適用しない。
これも現行法で同じ規定ありますね。

第28條(法の一部を適用する建築物)
1 左ノ各号ノ一ニ該当スル建築物ニシテ行政官庁支障ナシト認ムルモノニ対シテハ市街地建築物法第8條、第9條及第11條ノ規定ヲ適用セザルコトヲ得

以下の各号に該当する建築物にて行政が支障ないと認めるものについては市街地建築物法第8条、第9条及び第11条の規定を適用しなければならない

一 鳥居、形像、紀念門、紀念塔ノ類
ニ 交通信号塔、公共便所ノ類
三 陸橋ノ類
四 地下停車場ノ類
五 高架工作物内ニ設クル倉庫、店舗ノ類

1 鳥居、形像、記念門、記念塔の類
2 信号塔、公衆便所
3 陸橋の類
4 地下駐車場の類
5 高架工作物内に設ける倉庫、店舗の類(高架下の店舗倉庫など)
このあたりの規定は現行法の工作物の規定ですね。

今回は25条から28条までアップします。

2010年2月15日月曜日

市街地建築物法施行令 9

市街地建築物法施行令私家版9

第17條(損失を補償すべき場合)
1 市街地建築物法第18條第2項ノ規定ニ依り損失ヲ補償スベキ場合ハ左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ニ限ル

市街地建築物法第18条第2項の規定により損失を補填すべき場合は以下に該当する場合に限る。


一 地域、住居専用地区、工業地域内特別地区又ハ工業専用地区ノ指定又ハ変更ニ基キ建築物ノ使用禁止又ハ建築物主要構造部ノ除却ヲ命ジタル場合

地域、住居地専用地区、工業地域内特別地区又は工業専用地区の指定又は変更にもとづき建築物の使用禁止又は建築物主要構造部の除却を命じた場合


ニ 美観地区ノ指定又ハ変更ニ基キ建築物主要構造部ノ除却ヲ命ジタル場合

美観地区の指定又は変更にもとづき建築物主要構造部の除却を命じた場合

三 建築線ノ指定又ハ変更ニ基キ建築物主要構造部ノ除去ヲ命ジタル場合

建築線の指定又は変更にもとづき建築物主要構造部の除却を命じた場合

四 建築線ニ面スル建築物ノ壁面ノ位置ノ指定ニ基キ建築物主要構造部ノ変更又ハ除去ヲ命ジタル場合

建築線に面する建築物の壁面の位置の指定にもとづき建築物主要構造部の変更又は除却を命じた場合

五 建築物ノ高又ハ建築物ノ敷地内ニ存セシムベキ空地ニ関スル規定ニ基キ建築物主要構造部ノ除却ヲ命ジタル場合

建築物の高さ又は建築物の敷地内に必要な空間に関する規定にもとづき建築物主要構造部の除却を命じた場合



第18條(補償すべき範囲)
1 市街地建築物法第18條第2項ノ規定ニ依リ補償スベキ損失ハ通常生ズベキ損失ニ限ル

市街地建築物法第18条第2項の規定に依り補償すべき損失は通常生ずべき損失に限る

第19條(損失を請求し得る期間)
1 前2條ノ規定ニ依ル損失補償ノ請求ハ市街地建築物法第18條第1項ノ措置ヲ命ゼラレタル者之ヲ命ゼラレタル日ヨリ起算シ3月内ニ之ヲ爲スコトヲ得

前2条の規定による損失補償の請求は措置を命ぜられた日より起算して3ヶ月とする。


第20條(補償の責に任ずる公共團体)
1 市街地建築物法第18條第2項ノ公共團体トハ同法第23條ノ規定ニ依ル同法適用区域ノ属スル市区町村トス

市街地建築物法第18条第2項の公共団体とは同法第23条の規定に依る同法適用区域の属する市区町村とする。


第21條(補償裁定機関)
1 補償義務ノ有無及補償ノ金額ハ補償審査会之ヲ裁定ス

補償義務の有無及び補償の金額は補償審査会の裁定とする

第22條(補償審査会)
1 補償審査会ハ第20條ニ規定スル市街地建築物法第18條第2項ノ公共團体毎ニ之ヲ置ク

補償審査会は第20条に規定する公共団体毎にこれを置く

2 補償審査会ハ会長1人及委員12人ヲ以テ之ヲ組織ス

補償審査会は会長1人及び委員12人をもってこれを組織する。


第23條(補償審査会の構成)
1 会長ハ地方長官ヲ以テ之ニ充ツ
2 委員ハ左ニ褐グル者ヲ以テ之ニ充ツ
一 関係各庁高等官  4人
ニ 前條第1項ノ公共團体ノ吏員  2人
三 前号ノ公共團体ノ識会ノ議員 4人
四 学識経験アル者  2人
3 前項第一号、第ニ号及第四号ノ委員ハ主務大臣之ヲ命ジ第三号ノ委員ハ其ノ議会ニ於テ之ヲ選挙ス

第24條(補償審査会の実施)
1 補償審査会ニ関シテハ土地收用法第27條乃至第31條、第37條、第39條、第40條第1項、第2項、第42條乃至第45條、第69條、第72條及第83條ノ規定ヲ準用ス
2 第22條第1項ノ公共團体ノ2以上ニ亘ル建築物ニ関シテハ関係補償審査会合同シテ会議ヲ開クベシ

補償に関する条文第17条から24条までアップします。

2010年2月14日日曜日

市街地建築物法施行令 8

市街地建築物法 施行令 私家版8

第15條(建築面積及敷地面積の計測方法)
1 本令ニ於テ建築面積トハ建築物ノ水平断面ニ於ケル外壁ノ又ハ之ニ代ルベキ柱ノ中心線内面積中最大ナルモノヲ謂ウ但シ地階ニシテ其ノ外壁ノ高地盤面上2メートル以下ノモノノ部分ノ面積ハ之ヲ建築面積ト看做サズ

建築面積とは建築物の水平断面における外壁又はこれに代わる柱の中心線内面積中最大のものをいう。ただし地下にて外壁の高さが地盤面上2m以下のものの部分の面積はこれを建築面積とみなさない。

2 軒、庇、桔出縁ノ類ガ前項ノ中心線ヨリ突出スルコト1メートルヲ超ユル場合ニ於テハ其ノ外端ヨリ1メートルヲ後退スル線ヲ以テ前項ノ中心線卜看做ス

軒、ひさし、はね出し縁の類が柱の中心線より1mを超える場合においては、外壁より1mを後退する線をもって中心線とみなす。
桔出縁(はねだしえん)

3 第14條ノ建築物ノ敷地ノ面積トハ建築物ノ敷地ノ水平断面ノ面積中最大ナルモノヲ謂う

第14条の建築物の敷地の面積(建ぺい率の対象となる面積)とは建築物の敷地の水平断面の面積の最大のものをいう。



第16條(建築物の敷地の定義)
第七條、第八條、第十條、第十四條、前條及第十七條ノ建築物ノ敷地トハ一構ノ建築物ニ属スル一團ノ土地ヲ謂フ
後に以下に改正
1 本令ニ於テ建築物ノ敷地トハ一構ノ建築物ニ属スル一團ノ土地ヲ謂フ

建築物の敷地とは一つの建築物に属する一団の土地をいう。
一団の土地とは飛び地でないという意味であるが、一構のという扱いは行政の解釈によるところがあるようです。


第16條ノ2(建築物が2以上の地域地区に跨る場合)
1 建築物ノ敷地ガ2以上ノ地域又ハ地区ニ跨ル場合ニ於テ第1條乃至第3條若ハ第14條ノ規定又ハ住居専用地区、工業地域内特別地区、工業專用地区若ハ空地地区ニ関スル制限ノ適用ニ関シテハ制限ノ最厳ナルモノニ依ル但シ特別ノ事由アル場合ニ於テ行政官庁ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ

建築物の敷地が2以上の地域又は地域にまたがる場合において、第1条から第3条(用途地域)もしくは第14条(建ぺい率)の規定又は住居専用地域、工業地域内特別地区、工業専用地区もしくは空地地区(すべて特例により定められた地区)に関する制限の適用に関しては最も厳しいものによる。ただし特別の事由がある場合において行政の許可を受けたときはこの限りにない。

今回は15條から16條の2までアップ




2010年2月12日金曜日

市街地建築物法施行令 7

市街地建築物法施行令 私家版 7回目


第11條 (空地の規定)
建築物ヲ建築スル場合ニ於ケル其ノ高又ハ其敷地内ニ存セシムヘキ空地に關シテハ地方ノ状況地及地域區ノ種別土地ノ状態、建築物ノ構造、前面道路ノ幅員等ヲ参酌シ勅命ヲ以テ必要ナル規定ヲ設クルコトヲ得


建築物を建築する場合における高さ、敷地内にある空地に関しては地方の状況、地域区の種別、土地の状況、建築物の構造、前面道路の幅員等を考慮し必要な規定を設けることが出来る。地方に決定権を与える条文だが、後に削除されている。


第12條(屋上突出物に対する高の制限の緩和)

1 煙突、棟飾、避雷針、旗竿、風見竿等建築物ノ屋上ニ突出スルモノノ高ハ建築物ノ高ニ之ヲ算入セズ


煙突、飾り棟、避雷針、旗竿、風見鶏などの装飾品が建築物の屋上に突出する場合の高さは算入しない


2 装飾塔、物見塔、屋窓、昇降機塔、水槽等建築物ノ屋上ニ突出部ノ高ハ行政官庁命令ノ定ムル所ニ依り建築物ノ高ニ之ヲ算入セザルコトヲ得


装飾塔、物見塔、屋窓、昇降機塔、水槽等建築物の屋上に突出する部分の高さは、行政の定める判断により建築物の高さに算入されることがある。

第13條(特殊用途建築物の高の制限の除外)

1 本令中高ニ関スル規定ハ煙突、物見塔、扛重機、水槽、氣槽、無線電信用電柱ノ類及工業用建築物ニシテ行政官庁其ノ用途ニ依り己ムヲ得ズト認メ許可シタルモノニ付之ヲ適用セズ

本令の高さに関する規定は、煙突、物見塔、パンタグラフ、水槽類、無線用等電信柱及び工業用建築物で行政がその用途によりこれらに該当すると認め許可したものには適用しない。扛重機とはパンタグラフジャッキのこと。


2 本令中高ニ関スル規定ハ社寺建築物ニシテ行政官庁ノ許可ヲ受ケタルモノニ付之ヲ適用セズ


本令の高さに関する規定は、社寺建築物で行政の許可を受けたものについては、適用しない。

第14條(地域による空地制限)

1 建築物ノ建築面積ハ建築物ノ敷地ノ面積ニ対シ住居地域ニ於テハ十分ノ六、商業地域ニ於テハ十分ノ八、住居地域及商業地域外ニ於テハ十分ノ七ヲ超過スルコトヲ得ス但シ商業地域内ニ於テ行政官庁特ニ指定シタル角地其ノ他ノ区域ニ於ケル建築物ノ第一階及地階ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
後に改正

1 建築物ノ建築面積ハ建築物ノ敷地ノ面積ニ対シ商業地域内ニ於テハ10分ノ8、商業地域外ニ於テハ10分ノ6ヲ超過スルコトヲ得ズ但シ行政官庁特ニ指定シタル角地其ノ他ノ区域ニ於ケル建築物ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ


建築物の建築面積の敷地面積に対する割合(建ぺい率)は商業地域においては80%、商業地域以外においては60%を超過してはならない。ただし行政が指定した角地その他の区域における建築物についてはこれに限らない。当初は住居地域60%商業地域80%工業地域やその他地域は70%でした。また、当初は1階及び地階については商業地域内にのみ角地緩和があったようですが、後にこの部分が削除されています。オーバーハングなどの建物例が出てきたからでしょうか?


第14條ノ2 主トシテ住居ノ用ニ供スル建築物ハ住居地域外ニ在ルモノト雖モ前項ノ規定ノ適用ニ關シ住居地域内ニ在ルモノト看做ス

住宅の用途であれば住居地域外にあるものといえども住居地域内にあるものとみなして建ぺい率を適用する。これは後に削除されている。

今回は11条から14条の2までアップです。




2010年2月11日木曜日

市街地建築物法施行令 6

市街地建築物法施行令 私家版第6回目です。


第7條(前面道路の幅員による高の制限)
1 建築物各部分ノ高ハ其ノ部分ヨリ建築物ノ敷地ノ前面道路ノ対側境界線迄ノ水平距離ノ1倍4分ノ1ヲ超過スルコトヲ得ズ旦其ノ前面道路幅員1倍4分ノ1ニ8メートルヲ加ヘタルモノヲ限度トス但シ住居地域外ニ在ル建築物ニ付テハ1倍4分ノ1ヲ1倍2分ノ1トス

これは現在の道路斜線の扱いに近い。1倍4分ノ1とは1.25、道路斜線は8mを加えた範囲を限度とする。住居地域以外では斜線勾配は1.5とする。

2 前項ノ高トハ前面道路ノ中央ヨリノ高ヲ謂フ

道路斜線の高さ道路中央の高さからをいう


第8條(幅員同じからざる2以上の道路に面する場合の高の制限)
1 建築物ノ敷地ガ幅員同ジカラザル2以上ノ道路ニ接スル場合ニ於テ1ノ道路ノ境界線迄ノ水平距離ガ其ノ道路幅員ノ1倍2分ノ1以内ニシテ且25メートル以内ノ区域ノ内ニ在ル建築物各部分ノ高ニ付テハ前條ノ規定ノ適用ニ関シ其ノ道路ヲ前面道路卜看做ス

幅員の異なる2以上の道路に接する場合、1つの道路の境界線までの水平距離がその道路幅員の1.5倍以内且つ25m以内の区域内にある建築物各部の高さについては、道路斜線については前条の規定を適用し、(住居地域内であっても住居地域以外の)道路とみなす。
ちなみに施行当初は25mは80尺となっていた。
現在の建築基準法は2Aかつ35m以内なので、昔のほうが厳しかったといえる。

2 前項ノ規定ニ依ル前面道路2以上アル場合ニ於テ其ノ幅員同ジカラザルトキハ幅員小ナル前面道路ハ幅員最大ナル前面道路卜同一ノ幅員ヲ有スルモノト看做ス

前項の規定による前面道路2以上ある場合において幅員が同じでないときは、幅員の小さい前面道路は幅員の大きいほうの前面道路と同一の幅員を有するものとみなす。


3 第1項ノ場合ニ於テ同項ニ規定スル区域ノ外ニ在ル建築物各部分ニ付テハ幅員最大ナル道路ヲ前面道路ト看做ス

第1項の場合、住居地域の規定外の敷地にある建築物については、最大幅員の道路を前面道路とみなす。


第9條(建築線が道路境界線と一致しない場合)
1 道路境界線ガ建築線卜一致セザル場合ニ於テハ道路境界線又ハ道路幅員ニ関スル前2條ノ規定ノ適用ニ関シ建築線ヲ其ノ道路境界線卜看做ス

道路境界線が建築線と一致しない場合には(これは道路に水平に建築物線を設けない場合)建築線を道路境界線とみなして道路斜線などの規定を適用する。
街並みの建築線を一致させるため、前2条他は道路線と一致させていたようです。

第10條(前3條の特例)
1 建築物ノ敷地左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ前3條ノ規定ニ拘ラズ行政官庁別段ノ定ヲ爲スコトヲ得
一 公園、廣場、河、海ノ類ニ接スルトキ
ニ 前面道路ノ対側ニ公園、廣場、河、海ノ類アルトキ
三 其ノ地盤面卜前面道路ノ路面トノ高低ノ差著シキトキ
四 高低ノ差著シキ2以上ノ道路ニ接スルトキ
五 道路ノ終端ニ位スルトキ

道路高さによる制限の特例
以下の規定によるときは、行政は別途定めることができる。
1 公園、広場、河、海などに接するとき
2 前面道路の反対側に公園、広場、河、海などがあるとき
3 道路と地盤面に高低差があるとき
4 高低の差が著しい2以上の道路に接するとき
5 敷地が道路の終端に位置するとき

今回は第7條から第10條まで掲載です。

2010年2月9日火曜日

市街地建築物法施行令 5

市街地建築物法施行令 私家版5回目

第4條(地域による高の制限)
建築物ノ高ハ住居地域内ニ於テハ六十五尺(20メートル)ヲ、住居地域外ニ於テハ百尺(31メートル)ヲ超過スルコトヲ得ズ但シ建築物ノ周圍ニ廣潤ナル公園、廣場、道路其ノ他ノ空地アル場合ニ於テ行政官庁交通上、衛生上及保安上支障ナシト認ムルトキハ此ノ限ニ在ラス

住居地域は高さ20m未満、住居地域以外では高さ31mを超えてはならない。但し建築物の周辺に公園、広場、道路その他空地がある場合で行政が交通上、衛生上及び保安上支障がないと認めた場合はこの限りでない。

第5條(構造による高の制限)
煉瓦造建築物、石造建築物ハ高六十五(20m)尺ヲ、木造建築物ハ高五十尺(15m)軒高三十八尺(11m)階數三ヲ、木骨煉瓦造建築物及木骨石造建築物ハ高三十六尺(10.5m)軒高二十六尺(7.8m)ヲ超過スルコトヲ得ス

後に下記のように改訂される
煉瓦造建築物、石造建築物及木造建築物ハ高13メートル、軒高9メートルヲ、木骨煉瓦造建築物及木骨石造建築物ハ高八メートル軒高5メートルヲ超過スルコトヲ得ズ
レンガ造、石造(組積造)、及び木造建築物は高さ13m、軒高9mを超えてはならない。木骨レンガ造、木骨石造は高さ8m、軒高5mを超えてはならない。当初の大正期に高さ制限を設けたときの規定ではレンガ造、石造は20m、木造は15m軒高11mなど、規制は緩かったのだが、関東大震災以降、規制強化されて高さ制限が厳しくなっている。

2 前項ノ石造ニハ人造石及「コンクリート」造ヲ木造ニハ土蔵造ヲ包含ス

2項 前項の石造にはブロック造及び無筋コンクリート造を、木造には土蔵造りを含める。

3 第1項ノ木骨煉瓦造建築物トハ厚三寸(後に10センチメートル)以上ノ煉瓦積ヲ以テ木骨ヲ被覆又ハ填充シテ外壁ヲ構成スルモノヲ謂ヒ木骨石造建築物トハ厚三寸(後に10センチメートル)以上ノ石、人造石又ハ「コンクリート」ヲ以テ木骨ヲ被覆又ハ填充シテ外壁ヲ構成スルモノヲ謂フ

3項 第1項の木骨レンガ造建築物とは厚さ10cm以上のレンガ積みをもって木骨を被覆又は充填して外壁を構成するものをいい、木骨石造建築物とは厚さ10cm以上の石、ブロック又はコンクリートをもって木骨を被覆又は充填して外壁を構成するものをいう。

4 1建築物ニシテ外壁2種以上ノ構造ヨリ成ルモニ付テハ第1項ノ規定ノ適用ニ関シ制限ノ最厳ナルモノニ依ル

4項 1つの建築物で2種類以上の外壁で構成されるものについては第一項の規定に関して最も厳しいものを適用する。つまり、木骨レンガ造を一部でも構成すれば高さ規定は最高で8mとすることになる。

第6條(高及び軒高の定義)
 前2條ニ規定スル建築物ノ高トハ地盤面ヨリ建築物ノ最高部迄ノ高ヲ謂フ

前2条に規定する建築物の高さとは地盤面より建築物の最高部までの高さをいう

2 前條第1項ノ軒高トハ地盤面ヨリ建築物ノ外壁上端迄ノ高、外壁上端ニ扶欄、扶壁又ハ軒蛇腹アルトキハ其ノ最高部迄ノ高、出軒ノ場合ニハ軒桁上端迄ノ高ヲ謂フ但シ切妻ノ部分ハ軒高ニ之ヲ算入セズ

前条第1項の軒高とは地盤面より建築物の外壁上端までの高さ、外壁上端に手すり、(扶欄とは手すりのこと)、パラペット(扶壁とはバットレスのような支壁も同じ意味だが、この場合はパラペットの立ち上がりを示す)軒蛇腹(これは軒先に石や銅板製で作成されたモール状の飾りのようなもの。コーニスなどと呼ばれる帯)あるときはその最高部の高さ、出軒(通常の軒先)の場合には軒桁上端までの高さをいう。
ただし、切り妻の部分は軒高として算入しない。モヤ、棟木などは軒高にはならない。

3 前2項ノ地盤面ニ高低アルトキハ行政官庁其ノ地盤面ヲ認定ス

前2項の地盤面に高低差がある場合は行政が地盤面を認定する。現在の建築基準法の取り扱いは明確なものがありますが、この時代は行政判断だったんですね。

今回は第4条から第6条まで記載します。

2010年2月8日月曜日

市街地建築物法施行令 4

市街地建築物法施行令 第4回目

第3條ノ2(不適格建築物ノ増、改、再築又は用途変更)

前3條ノ規定ニ依り現在地ニ建築スルコトヲ得ザル種類ニ属スル建築物ハ行政官ノ許可ヲ受ケ左記各号ニ規定スル制限内ニ於テ増築、改築、再築又ハ用途ノ変更ヲ爲スコトヲ妨ゲズ

前3条の規定(住宅・商業・工業地域内の規定)により現存する建築物に属する建築物は行政の許可を受け以下の各号に規定する制限内において増築、改築、用途変更をすることを認める再築って現在の建築基準法にはありませんね?
当時の建築用語集によると、「建物を取り壊した後へ略々同様の建物を建てること。」市街地建築物法上の解釈では、火災其の他の不可効力の原因により滅失したる建物を大体原型に復旧する行為をいう。とある。
何故「不可抗力」の場合がわざわざ定義されているのか不明です。


一 建築物ハ敷地ヲ拡張セザルコト

建築物は敷地を拡張してはならない

ニ 建築物ノ増築、改築、再築又ハ用途ノ変更ニ因り増加スベキ建築面積ハ現在地ニ建築スルコトヲ得ザルニ至リタル際現ニ存在スル建築物ノ建築面積ノ2分ノ1ヲ超過セザルコト

建築物の増築、改築、再築、用途変更にて増加する建築面積は既存部分の2分の1を超えてはならない。これも現在の基準法にはありません。

三 建築物ノ増築、改築、再築又ハ変更ニ因リ増加スベキ,床面積ハ現在地ニ建築スルコトヲ得ザルニ至リタル際現ニ存在スル建築物ノ床面積ヲ超過セザルコト

建築物の増築、改築、再築、用途変更にて増加する床面積は既存部分の床面積を超えてはならないこれも現在の基準法にはありません。

四 工場ノ常時使用スル原動機馬力数ヲ増加スル場合ニ於テ増加スベキ馬力数ハ現在地ニ建築スルコトヲ得ザルニ至リタル際常時使用スル馬力合計数ヲ超過セザルコト

工場で、常時使用する原動機の出力を増加する場合において、増加する出力は、その建物用途にて許可された出力合計を超えてはならない

五 前号ニ褐グルモノヲ除クノ外用途ノ変更ニ付テハ現在地ニ建築スルコトヲ得ザルニ至リタル際現ニ存在スル建築物ノ用途ニ類似スル用途又ハ設備ヲ変更セズ若ハ之ニ些少ノ変更ヲ加フルニ依り営ムコトヲ得ル用途ニ限ルコト

前号に掲げるものを除く用途変更については現在地に許可された建物用途に類似する用途又は設備を変更せず若干の変更程度に留める用途に限ること

2 行攻官庁地域ノ種別、上地ノ状況、事業ノ種類、作業ノ方法、建築物ノ構造設備、除害ノ設備又ハ装置等ヲ参酌シ特ニ支障ナシト認ムルモノニ付テハ前項第ニ号乃至第四号ノ制限ヲ軽減スルコトヲ得

行政が地域の種別、敷地の状況、事業の種別、作業方法、建築物の構造及び設備などで特に支障がないと認めるものについては前項第2号から第4号(面積の規定から出力の制限規定)の制限を軽減することができる

3 第26條ノ規定ニ依り建築ノ許可ヲ受ケタル建築物ハ前2項ノ規定ノ適用ニ付テハ之ヲ現在地ニ建築スルコトヲ得ザルニ至リタル際現ニ存在スル建築物卜看倣ス

第26条の規定とは市街地建築法第18条による、用途地域が変更した場合などのこと。現在の建築基準法でいう既存不適格建築物のことで、地域が変わった場合でも現在地に建築許可を得た際に存在する建築物とみなす


今回も1つの項目のみです。

市街地建築物法施行令 3

市街地建築物法施行令 私家版第3回目

第3條 (工業地域内にのみ許される用途)
 建築物左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ工業地域内ニ非ザレバ之ヲ建築スルコトヲ得ズ但シ第一号、第ニ号又ハ第四号ニ該当スル建築物ニシテ行政官庁衛生上有害ノ若ハ保安上危険ノ虞ナシト認ムルモノ又ハ公益上己ムヲ得ズト認ムルモノハ此ノ限ニ在ラズ

以下の各号に該当するときは工場地域内でなければ建築することは出来ない。ただし、第一号、第二号、第四号に該当し、建築物にて行政が害がないと認めたときはこれに限らない。

一 常時使用スル原動機馬力数ノ合計50ヲ超過スル工場、但シ印刷工場、精密機器製作工場、製氷工場及冷凍工場ヲ除ク

常時使用原動機出力が50馬力を超える工場。ただし、印刷工場、精密機器制作、製氷工場、冷凍工場は除く。

ニ 左ニ褐グル事業ヲ営ム工場

イ 銃砲火藥類取締法ノ火藥類ノ製造

銃砲火薬類取締法の火薬製造

ロ 塩素酸塩類、過塩素酸塩類、硝酸塩類、黄燐、赤燐、硫化燐、金属「カリウム」、金属「ナトリウム」、「マグネシウム」、過酸化水素水、過酸化「カリ」過酸化「ソーダ」、過酸化「バリウム」、ニ硫化炭素、「メタノール」、「アルコール」「エーテル」、「アセトン」、醋酸「エステル」類、「ニトロセルローズ」、「ベンゾール」、「トルオール」、「キシロール」、「ピクリン」酸、「ビクリン」酸塩類、「テレビン」油又ハ石油類ノ製造

これは解説無くても判ると思います。要は可燃・反応性危険物の製造ですね。

ハ 燐寸ノ製造

マッチの製造

ニ 「セルロイド」ノ製造

セルロイドは可燃性があります。

ホ 「ニトロセルローズ」製品ノ製造

ニトロセルロースは塗料原料に使われることもあるが、火薬原料としても使用され、非常に可燃性が強い

へ 「ビスコース」製品ノ製造

ビスコースは当時、人造絹糸と言われたレーヨンの原料である。

ト 合成染料若ハ其ノ中間物、顔料又ハ塗料ノ製造(漆又ハ水性塗料ノ製造ヲ除ク)

この染料は水性系塗料は除かれている。溶剤系塗料と判断される。

チ 溶剤ヲ用フル「ゴム」製品又ハ芳香油ノ製造

これも溶剤を用いる製品製造となっている。

リ 乾燥油又ハ溶剤ヲ用フル擬皮紙布又ハ防水紙布ノ製造

ヌ 溶剤ヲ用フル塗料ノ加熱乾燥又ハ焼付

ル 石炭「ガス」類又ハ「コークス」の製造

石炭を使用しやすい状態になったものがコークスであるが、その段階で、昔の都市ガスが発生していた。石炭ガスには一酸化炭素が含まれていて有害であった。現在ではほとんど姿を消している。

ヲ 圧縮「ガス」又ハ液体「ガス」ノ製造(製氷又ハ冷凍ヲ目的トスルモノヲ除ク)

冷媒ガスを除くガス製造。

ワ 塩素、「ブロム」、「ヨード」、硫黄、塩化硫黄、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、燐酸、苛性「カリ」、苛性「ソーダ」、「アンモニア」水、炭酸「カリ」、洗濯「ソーダ」、「ソーダ」灰、晒粉、次硝酸蒼鉛、亞硫酸塩類、「チオ」硫酸塩類、砒素化合物、「バリウム」化合物、鉛化合物、銅化合物、水銀化合物、「シアン」化合物、「クロロホルム」、四塩化炭素、「ホルマリン」、「ズルホナール」、「グリセリン」、「イヒチオールズルホン」酸「アンモン」、醋酸、石炭酸、安息香酸、「タンニン」酸、「アセトアニリド」、「アスピリン」又ハ「グアヤコール」ノ製造

これも反応性可燃物と毒物である。

力 蛋白質ノ加水分解ニ依ル製品ノ製造

タンパク加水分解物とは、「味の素」などの人工調味料のこと。

ヨ 油脂ノ採取又ハ加熱加工

これは動物性・植物性油脂の加工工場です。

夕 石鹸、「フアクチス」又ハ「ベークライト」ノ製造

ファクチスとは加硫油のこと。「フアクチス」では検索ヒットしません。一般にゴムを作るのに使用します。ベークライトはフェノール樹脂ですからプラスチック系加工に使用されます。

レ 肥料ノ製造ソ 製紙ツ 製革、製膠又ハ毛皮若ハ骨ノ精製

革、ニカワ、毛皮はわかりますが、骨もですか・・・

ネ 「アスファルト」ノ精製ナ 「アスファルト」、「コールタール」、木「タール」、石油蒸溜産物又ハ其ノ残渣ヲ原料トスル製造

ラ 「セメント」、石膏、消石灰、生石灰又ハ「カーバイト」ノ製造

特に説明は不要でしょうが、これらは臭い、粉塵、可燃爆発の危険性があるものです。生石灰の熱反応などは取り扱い次第では火災の可能性もあります。

ム 金属ノ溶融又ハ精練(活字又ハ金属工藝品ノ製造ヲ目的トスルモノヲ除ク)

活版用。工芸品を除く金属精製工場です。

ウ 電氣用「カーボン」ノ製造

電気用カーボンとは、モーターなどでは必需品です。日曜大工でモーター類を扱ったことがあるなら、消耗部品なのでわかると思います。

ヰ 金属厚板又ハ形鋼ノ工作ニシテ鋲打又ハ填隙作業ヲ伴フモノ

一般に鉄工所のことですね。最近は鋲打ちは珍しいですが。

ノ 鉄釘類又ハ鋼球ノ製造

釘はわかりますが、鋼球とは、一般にベアリングのことです。

オ 伸線、伸管又ハ「ロール」ヲ用フル金属ノ圧延

これらは、一般に大規模な製鋼所です。小規模な町の鍛冶屋は含まれません。

三 前号ニ掲グルモノヲ除クノ外行政庁衛生有害ノ又ハ保安上危険ノ虜アリト認メ命令ヲ以テ指定スル事業ヲ営ム工場


前号を除く行政が有害又は保安上危険な恐れがあると認めて指定する事業を営む工場

四 第ニ号イ、ロ、ハ、ニ及ヲノ物品、可燃性「ガス」又ハ「カーバイト」ノ貯蔵又ハ処理ニ供スルモノ

前号による可燃性物品の貯蔵及び処理に関する工場など

五 前号ニ褐グルモノヲ除クノ外行政官庁衛生上有害ノ又ハ保安上危険ノ虞アリト認メ命令ヲ以テ指定スル物品ノ貯蔵又ハ処理ニ供スルモノ

可燃性物品を除く行政が有害又は保安上危険な恐れがあると認めて指定されたものを貯蔵又は処理する工場など


今回も条文が長いので第3条のみアップします。

2010年2月5日金曜日

市街地建築物法施行令 2

市街地建築物法施行令  私家版第2回目です。

第2條(商業地域内の禁止用途)
1建築物左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ商業地域内ニ之ヲ建築スルコトヲ得ズ但シ第一号又ハ第ニ号ニ該当スル建築物ニシテ行政官庁商業ノ利便ヲ害スル虜ナシト認ムノレモノ又ハ公益上已ムヲ得ズト認ムルモノハ此ノ限ニ在ラズ

商業地域で建築することが出来ないものは次のものである。ただし、第一号又は第二号は利便等支障がなければ行政許可を得ることが出来る。

一 常時使用スル原動機馬力数ノ合計15ヲ超過スル工場但シ日刊新聞印刷所ヲ除ク

15馬力ですから0.736kw×15=11.04kwになります。但し書きで新聞社の印刷工場は除かれていますね。

ニ 前條第ニ号ニ該当スルモノ但シ左ノ各号ノ一ニ該当スル事業ヲ用フルモノヲ除ク

前条第二号に該当するもの(住居系住居地域で禁止されている工場など)

イ 容量30リットル以下ノ「アセチレンガス」発生器ヲ用フル金属ノ工作

30リットル以下のガスを用いるので、少量ですね。

ロ 馬力数ノ合計0.25以下ノ原動機ヲ用フル塗料ノ吹付

0.25馬力以下ですから0.2Kw 程度以下の原動機ですから、かなり小さいですね。

ハ 原動機ヲ使用スル2台以下の研磨機ニ依ル金属ノ乾燥研磨

原動機を使用する2台以下の研磨機による金属の乾燥研磨 これは音と粉塵が出ます。

ニ 前條第七号乃至第九号ニ該当スルモノ

前条第7号から第9号に該当するもの火葬場、屠場、廃棄物処理場などです。

四 前各号ニ褐グルモノヲ除クノ外行政官庁商業ノ利便ヲ害スル虞アリ卜認メ命令ヲ以テ指定スルモノ

行政が利便を害するおそれがあると判断すれば命令を発し、指定出来る。基本的に商業地域は主としての用途が事務、問屋、小売商店、劇場その他の娯楽用建築物、警察署、消防署、郵便局その他雑種の商業に使用する建築物の規定がある。
工場等の制限は、その他規定により床面積の合計の1/4以上は製造工場に使用することはできません。又、製造工場を用途とする場合であっても無害安全なものに限られています。
実は、ここに書かれている条文、大正時代には第1号から第3号までは次のように書かれていた。


1 建築物左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ商業地域内ニ之ヲ建築スルコトヲ得ス一 常時五十人以上の職工ヲ使用スル工場又ハ常時使用スル原動機馬力数ノ合計十を超過スル工場但シ日刊新聞印刷所及行政官 商業の利便ヲ害スル虞ナシト認ムルモノ又ハ公益上己ムヲ得スト認ムルモノハ此ノ限ニ在ラズ

当初は常時50人以上又は原動機10馬力数でした。緩和されたようです。又は軍需関係で緩和する必要があったのかもしれません。


今回は第2条のみアップです。

2010年2月4日木曜日

市街地建築物法施行令 1

市街地建築物法施行令の解釈をアップします。
あくまで私家版ですので、間違いがあるかもしれません。

市街地建築法施行令
第1條 (住居地域内の禁止用途)
1 建築物左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ住居地域内ニ之ヲ建築スルコトヲ得ズ但シ第一号乃至第四号ニ該当スル建築物ニシテ行政官庁住居ノ安寧ヲ害スル虚ナシト認ムルモノ又ハ公益上己ムヲ得ズト認ムルモノハ此ノ限ニ在ラズ

住居地域内には次の用途のものは建築することはできない。ただし、一号から四号に該当する建築物で行政が住居地域にふさわしいと認めた場合はこれに限らない。

一常時使用スル原動機馬力数ノ合計3ヲ超過スル工場

常時3馬力以上の原動機を使用する工場 
1馬力=0.736Kwなので、2.2Kw以上ですね。

ニ 左ニ褐グル事業ヲ営ム工場

次の事業を営む工場ここに記載されている内容は市街地建築物法改正後のもので、当初は別途施行規則により定められていました。

イ 玩具用普通火工品ノ製造

がん具用花火の製造工場

ロ「アセチレンガス」ヲ用フル金属ノ工作(溶解「アセチレンガス」ヲ用フルモノヲ除ク)(ち)

アセチレンガスを用いて金属加工をする工場

ハ 引火性溶剤ヲ用フル「ドライクリーニング」又ハ「ドライダイング」(ら)

ドライダイングって何でしょう?意味不明です。ネットで検索しても判らなかったです。ダイングだから死んでるの?ということはミイラ製造業?

ニ 「セルロイド」ノ加熱加工又ハ鋸機ヲ用フル加工

セルロイドとは最近あまり見かけませんですね。これ、結構可燃性があるので危険だったのです。

ホ 印刷用「インキ」又ハ繪具ノ製造(ち)

インク、絵の具の製造工場

ヘ 塗料ノ吹付卜 亞硫酸「ガス」ヲ用フル物品ノ漂白(ち)

ガスを利用する漂白工場は危険ですね。

チ 骨炭其ノ他動物質炭ノ製造

骨炭などの動物性活性炭、ろ過材の製造工場

り 羽又ハ毛ノ洗滌、染色又ハ漂白

毛・羽の漂白、染色工場

ヌ 襤褸、屑綿、屑紙、屑絲、屑毛ノ類ノ消毒、選別、洗滌又ハ漂白

襤褸(らんる)、クズわた、クズかみ、クズいと、などの消毒、洗浄漂白工場
「ボロは着てても心は錦」って歌があったと思いますが、元来は襤褸=ボロだと解釈していただいたら良いでしょう。

ル 製綿、古綿ノ再製、起毛、反毛又ハ「フエルト」ノ製造ニシテ原動機ヲ用フルモノ

綿の再生してフェルトなどに加工場で原動機を使用する工場

ヲ 骨、角、牙、蹄、貝殻ノ挽割若ハ乾燥研磨又ハ金属ノ乾燥研磨ニシテ原動機ヲ用フルモノ

骨や貝殻類の研磨加工工場

ワ 鉱物、岩石、土砂、硫黄、金属、硝子、煉瓦、陶磁器、骨又ハ貝殻ノ粉砕ニシテ原動機ヲ用フルモノ
カ 墨、懐炉灰又ハ煉炭ノ製造

墨、カイロ灰、練炭の製造工場

ヨ 活字又ハ金属工藝品ノ製造(ち)

活字又は金属工芸品製造活字製造ってところが時代を感じます。

タ 瓦、煉瓦、土器類、陶磁器、人造砥石、坩堝又ハ琺瑯鉄器ノ製造(ち)
レ 硝子ノ製造又ハ砂吹
ソ 動力槌ヲ用フル鍛冶

動力を使うと不可ですから、動力を使わない昔ながらの鍛冶屋なら住居地域でも可能と解釈できますね。

三 室面積ノ合計50平方メートルヲ超過スル自動車ノ車庫

床面積50m2を超える自動車車庫

四 劇場、活動写眞館、演藝場又ハ観物場

劇場、映画館など。活動写真館など、時代を感じますね。で、ここまでの用途なら許可次第で住居地域でも建築可能でした。

五 待合又ハ貸座敷

待合や貸座敷などは現代ではピンときませんが、これは風俗営業です。この時代はハッキリした売春行為が黙認されていました。(原則は売春行為は禁止だったのですが、実態は・・・)

六 倉庫業ヲ営ム倉庫

倉庫業を営む倉庫

七 火葬場又ハ産穢物処理場

火葬場はわかりますが、産穢って解りますか?「さんえ」と読みます。文字で連想するように出産時に出たもの(後産)を処理する場所ということです。

八 屠場又ハ死畜処理場
九 塵芥又ハ汚物ノ処理場
十 前各号ニ掲グルモノヲ除クノ外行政官庁住居ノ安寧ヲ害スル虜アリト認メ命令ヲ以テ指定スルモノ

8号9号は説明の必要ありませんね。10号についても行政が生活を害する恐れがあると認めた場合は不可とする。これも当然です。

これらは施行細則などでも詳しく記述ありました。そのうちそちらもアップできればいいですが、気長に待っていてください。
今回は長い条文なので、第一条のみのアップです。

2010年2月3日水曜日

市街地建築物法 その5

市街地建築物法私家版 第5回目

第二十一條 (訴願)
本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ規定シタル事項ニ付行政官庁ノ為シタル処分ニ不服アル者ハ訴願スルコトヲ得
2 本法ニ依リ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得ル場合ニ於テハ主務大臣ニ訴願スルコトヲ得ス

本法に基づいて発する命令に規定された事項につき、行政庁の処分に不服があるものは訴願することとする。
2 本法により行政裁判所に出訴する場合においては大臣に訴願することは出来ない。


第二十二條 (行政庁による違法行為)
本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ規定シタル事項ニ付行政官庁ノ為シタル違法処分ニ因リ権利ヲ毀損セラレタリトスル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得

本法に基づいて発せられる命令に規定された事項につき、行政庁の行為による違法処分により権利を毀損されたものは、行政裁判所に出訴することができる。


第二十三條 (適用される区域)
本法適用ノ区域ハ主務大臣ノ指定スル市街地トス
2 特別ノ必要アル場合ニ於テハ主務大臣ハ前項ノ市街地ノ外ニ亙リ本法適用ノ区域ヲ指定スルコトヲ得

本法の適用する区域は大臣の指定する市街地とする
2 特別の必要がある場合において、大臣は前項の市街地のほかに本法を適用する区域を指定することが出来る。



第二十四條 (適用される建築物等の範囲)
本法ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ建築工事中ノ建築物、建築工事ニ着手セサルモ設計アル建築物又ハ建築物ニ非サル工作物ニ之ヲ準用スルコトヲ得

本法は建築工事中の建築物、建築工事に着手していないが設計されている建築物、又は建築物に付属される工作物に準用される


第二十五條 (適用される建築物)
本法ノ全部又ハ一部ノ適用ヲ必要トセサル建築物ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム

本法の全部又は一部の適用を必要とする建築物は勅令をもってこれを定める。


第二十六條 (道路)
本法ニ於テ道路ト称スルハ幅員四メートル以上ノモノヲ謂フ
2 幅員四メートル未満二・七メートル以上ノ道路及道路ノ新設又ハ変更ノ計画アル場合ニ於ケル其ノ計画ノ道路ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ道路ト看做ス

本法において道路と称するは、幅員4m以上のものをいう。
2 幅員4m未満2.7m以上の道路及び道路の新設又は変更の計画がある場合における計画道路は勅令の定めるところにより道路とみなす。
以前は9尺(2.7m)以上を道路とすると施行令にあったのだが、これも昭和になってからの規定である。大正12年の関東大震災以前とそれ以降の改正で、道路幅員や高さ制限などが厳しいほうに変更している。



  附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
  附 則 (昭和九年法律第四六号)
1 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
2 従前ノ第二十三條ノ規定ニ基キ指定セラレタル区域ハ同條ノ規定ニ依リ指定セラレタルモノト看做ス

  附 則 (昭和十三年法律第二十九号)
1 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
2 本法施行前市街地建築物法施行令第十一條ノ規定ニ依リ指定シタル区域及其ノ区域内ニ於ケル建築物ニ付定メタル高ノ最低限度ハ各之ヲ本法第十一條第二項ノ規定ニ依リ指定シタル高度地区及其ノ地区内ニ於ケル建築物ニ付定メタル高ノ最低限度ト看做ス


市街地建築物法はこれにて終了です。次回は施行令をアップする予定です。

市街地建築物法 その4

市街地建築物法 4回目 現代語訳私家版

第十六條 (工事執行時の規定)
主務大臣ハ建築物ノ工事執行ニ関シ必要ナル規定ヲ設クルコトヲ得

大臣は建築物の工事執行に関し必要な規定を設けることができる。


第十七條 (工事現場の危害の防止)
行政官庁ハ建築物左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ニ於テハ其ノ除却、改築、修繕、使用禁止、使用停止其ノ他ノ必要ナル措置ヲ命スルコトヲ得 
一 保安上危険ト認ムルトキ 
二 衛生上有害ト認ムルトキ 
三 本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ違反シテ建築物ヲ建築シタルトキ

行政は建築物の以下の各号に該当する場合においては、除去、改築、修繕、使用禁止、使用停止その他必要な措置を命じることができる。
一 保安上危険と認めるとき
二 衛生上有害と認めるとき
三 本法律にて発する命令に違反して建築物を建築したとき


第十八條 (地区設定変更による変更および損失補償)
本法適用区域ノ設定若ハ変更、地域若ハ地区ノ指定若ハ変更其ノ他ノ場合ニ於テ従来存在スル建築物カ其ノ後新ニ建築セラレタリトセハ本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ違反スヘキモノナルトキハ行政官庁ハ相当ノ期間ヲ指定シ其ノ建築物ニ付前條ニ掲クル必要ナル措置ヲ命スルコトヲ得
2 前項ノ規定ニ依ル措置ヲ命スルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ建築物所在地ノ公共団体ヲシテ損失ヲ補償セシム
3 前項ノ規定ニ依リ補償ヲ受クヘキ者補償金額ニ付不服アルトキハ其ノ金額決定ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ三月内ニ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ訴願シ又ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得ス

本法適用区域の設定若しくは変更、地域もしくは地区の指定、変更その他の場合において従前より存在する建築物がその後新たに建築されたときは、本法に基づいて発する命令に違反する行為等になるときは行政庁は相当の期間を指定し、その建築物に前条に掲げる措置を命ずることができる。
2 前項の規定による措置を命ずるときは告示の定めるところにより建築物所在地の公共団体より損失補償を受ける
3 前項の規定により保障を受けたものは、補償金額に不服があるときは金額決定の通知を受けた日より3ヶ月以内に裁判所に申し立てできる。この場合において


第十九條 (罰則)
建築主、建築工事請負人、建築工事管理者又ハ建築物ノ所有者若ハ占有者本法若ハ本法ニ基キテ発スル命令又ハ之ニ基キテ為ス処分ニ違反シタルトキハ二千円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス

建築主、建築工事請負人、建築工事管理者又は建築物の所有者もしくは占有者は本法に基づいて発する命令又は処分に違反した場合は2,000円以下の罰金又は科料に処す。
これは昭和13年当時の貨幣価値を示す指標を何にするかによっても価値がわかりかねますが、物価ベースで現在は2000倍、平均給与ベースだと5000倍が相当するらしいです。ただ、平均給与は現在水準からみても低いので物価ベースとして現在の価値で400万くらいってところでしょうか?


第二十條 (無能力者等の処罰)
前條ノ規定ハ前條ニ掲クル者未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ営業ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者其ノ営業ニ関シ前條ニ規定スル違反ヲ為シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
2 前條ニ掲クル者ハ其ノ代理人、同居者、雇人其ノ他ノ従業者其ノ営業ニ関シ前條ニ規定スル違反ヲ為シタルトキハ自己ノ指揮ニ出テサルノ故ヲ以テ処罰ヲ免ルルコトヲ得ス
3 前條ニ掲クル者法人ナルトキハ明治三十三年法律第五十二号ヲ準用ス

前条の規定による罰則対象者が未成年者、禁治産者のときは法定代理人にこれを適用する。ただし、営業に関し成年者と同等の能力を有する未成年者が営業に関し前条の違反をした場合はこの限りでない。
2 前条の規定による者はその代理人、同居人、雇い人その他従業者がその営業に関し前条に違反したときは、指揮したものに責を負うため、処罰を免ずることとする。
3 前条に掲げるものが法人のときは、明治三十三年法律第五十二号を準用する。明治三十三年法律第五十二号とは、法人において租税及び葉煙草専売に関し事犯ありたる場合に関する法律といい、脱税行為等に関する法律である。

今回は第16条から第20条までアップします。

2010年2月1日月曜日

市街地建築物法 その3

市街地建築物法私家版 第3回目
今回は第11条から第15条までをアップします。


第十一條 (地区の制限の付加)
建築物ヲ建築スル場合ニ於ケル其ノ高又ハ其ノ敷地内ニ存セシムヘキ空地ニ関シテハ地方ノ状況、地域及地区ノ種別、土地ノ状態、建築物ノ構造、前面道路ノ幅員等ヲ参酌シ勅令ヲ以テ必要ナル規定ヲ設クルコトヲ得
2 主務大臣必要ト認ムルトキハ高度地区ヲ指定シ其ノ地区内ニ於ケル建築物ニ付高ノ最低限度若ハ最高限度ヲ定メ又ハ空地地区ヲ指定シ其ノ地区内ニ於ケル建築物ニ付床面積ノ敷地面積ニ対スル割合及敷地ノ疆界線ヨリノ距離ノ限度ヲ定ムルコトヲ得


建築物を建築する場合におけるその高さ又はその敷地内にある空地に関しては地方の状況、地域及び地区の種別、土地の状態、建築物の構造、前面道路の幅員等を考慮し、告示にて必要な規定を設けることがある。
2 大臣が必要と認めるときは高度地区を指定し、その地区内の建築物について高さ制限(最高高さもしくは最低高さ)を。又は空地地区を指定して、その地区内の建築物について容積率及び敷地境界線から建物までの距離の限度を定めることが出来る。


第十二條 (衛生、保安上の規定)
主務大臣ハ建築物ノ構造、設備又ハ敷地ニ関シ衛生上、保安上又ハ防空上必要ナル規定ヲ設クルコトヲ得

大臣は建築物の構造、設備又は敷地に関し衛生上、保安上又は防空上必要な規定を設けることができる。


第十三條 (防火地区)
主務大臣ハ火災予防上必要ト認ムルトキハ防火地区ヲ指定シ其ノ地区内ニ於ケル防火設備又ハ建築物ノ防火構造ニ関シ必要ナル規定ヲ設クルコトヲ得
2 防火地区内ニ於テハ建物ノ部分ヲ為ス防火壁ハ土地ノ疆界線ニ接シ之ヲ設クルコトヲ得

大臣は火災予防上必要と認めるときは防火地区を指定しその地区内における防火設備又は建築物の防火構造に関し必要な規定を設けることができる。
2項 防火地区内においては建物の部分をなす防火壁は土地の境界線に接しこれを設けることが出来るこの規定により、防火上有効な塀などを境界線いっぱいに建てることが可能ということ。


第十四條 (特殊建築物)
主務大臣ハ学校、集会場、劇場、旅館、工場、倉庫、病院、市場、屠場、火葬場其ノ他命令ヲ以テ指定スル特殊建築物ノ位置、構造、設備又ハ敷地ニ関シ必要ナル規定ヲ設クルコトヲ得

大臣は、学校、集会場、劇場、旅館、工場、倉庫、病院、市場、屠場、火葬場その他告示等により指定された特殊建築物の位置、構造、設備又は敷地に関し必要な規定を設けることが出来る。



第十五條 (美観地区)
主務大臣ハ美観地区ヲ指定シ其ノ地区内ニ於ケル建築物ノ構造、設備又ハ敷地ニ関シ美観上必要ナル規定ヲ設クルコトヲ得

大臣は美観地区を指定し、その地区内における建築物の構造、設備又は敷地に関し美観上必要な規定を設けることができる。